1 臨床資料 本群43例、男性19例、女性24例。年齢最小7歳、最大24歳、平均15.5歳。病程最短3ヶ月、最長2年。臨床症状はいずれも胸闷憋気、頭暈心悸、倦怠無力、精神萎靡などである。心電図所見:ST-T変化、T波低平または倒置、S-T段圧下0.05mv以上、期外収縮および伝導障害など。 2 治療方法 静悸湯を用いる:瓜蒌、丹参、赤芍、茯苓各15g、枳殻、柏子仁、苦参、太子参各12g、半夏、天南星各10g、生龍骨(先煎)、生牡蛎(先煎)各30g。水煎、1日1回、朝夕に分けて服用。3週間を1療程とする。 随症加減:胸闷憋気が著しく、痰多白粘の場合は枳殻12g、葶苈子6gを加え、龍骨、牡蛎を除く。陽気不足を伴い、四肢不温、胸闷気短の場合は制附子10g、桂枝12gを加え、苦参を除く。心血不足を伴い、心悸不安、面色不華の場合は黄芪30g、当帰15gを加え、半夏を除く。心陰不足を伴い、心悸怔忡、心煩少寐の場合は麦冬20g、酸棗仁15g、五味子10gを加え、赤芍、天南星を除く。 3 治療結果 顕著効果(胸闷気短、心悸頭暈、倦怠無力消失、心電図正常化)28例;効果(胸闷頭暈、倦怠無力緩解、心電図基本正常)11例;無効(自覚症状および体征改善なし、心電図正常化せず)4例。顕著効率は65.1%。 4 典型症例 劉某、男、36歳、1995年3月7日初診。主訴:胸闷憋気、心悸易煩4ヶ月以上、近2週間加重。倦怠無力、痰白粘で多い、少寐多夢、眠卧不寧、食欲欠佳。心電図所見:ST-T段変化、洞性心律不整、頻発房性期外収縮。診断:ウイルス性心筋炎。抗ウイルス、心筋栄養、心律不整抑制等の中西医治療を施行したが効果不顯で、当科にて診療。 診察:舌苔薄白根厚膩、証属心肺気滞、痰瘀阻絡。治療は宣肺解鬱、活血化痰、開竅通絡を目的とする。静悸湯に枳殻12g、葶苈子6gを加える。水煎、1日1回、朝夕に分けて服用。6剤服用後、胸闷憋気大幅軽減、他症状も軽減。薬効正確、前方を随症加減継続28剤服用後、胸闷憋気、心悸易煩、倦怠無力等の症状すべて消失、精神良、食欲大増。再検査心電図正常。効果保持のため、前方を再10剤服用。随訪現在まで、再発なし。 5 経験 ウイルス性心筋炎は中医の「心悸」「怔忡」「胸痹」の範疇に属する。病因は正気虚弱、外邪侵襲により、毒邪が虚を乗じて心に内舍し、脈絡に宿るためである。病程が長く、脾気損傷により湿が聚り、気虚により血行不力、気滞血瘀となる。痰瘀互結、心脈閉塞、気血通暢不能により心悸、怔忡が生じる。治療は宣肺解鬱、活血化瘀、益気健脾を主眼とする。 静悸湯の処方中、瓜蒌、枳殻、半夏、制天南星は宣肺解鬱、開胸散結、化痰開竅を効果とする。丹参、赤芍は活血化瘀、養血行気を効果とする。太子参、苦参、茯苓、柏子仁は益気健脾、寧心安神を効果とする(苦参は心律不整抑制作用を有する)。龍骨、牡蛎は重鎮安神で心悸を消すが、邪を敛わない。全方は宣上、暢中、滲下の機能を持ち、気畅血行、痰祛正復、標本兼治となり、病状は改善に向かう。
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