鍼刺の角度、方向、深さとは、毛針を皮下に刺入した後の具体的な操作要件を指す。鍼刺操作において、正しい鍼刺角度、方向、深さを掌握することは、鍼感を得ること、補瀉法を施行すること、鍼刺効果を発揮すること、鍼治療効果を高めること、そして鍼刺事故の防止に不可欠な要素である。 経穴の正確な位置取りは、皮膚表面の位置だけでなく、適切な鍼刺角度、方向、深さと組み合わせることで、経穴の治療効果を発揮できる。したがって、経穴を単なる一点として捉えるのではなく、立体的な経穴概念を持つ必要がある。 臨床では、同じ経穴に鍼を刺しても、角度、方向、深さが異なると、到達する組織構造、得られる鍼刺感、治療効果に差が出ることがある。 臨床医にとって、鍼刺操作の熟練度は、鍼刺角度、方向、深さを適切に把握できるかどうかに密接に関係している。臨床上の鍼刺角度、方向、深さは、施術部位、治療目的、患者の体質・体型などの状況に応じて、柔軟に決定される。 一、鍼刺の角度 鍼刺角度とは、鍼身が皮膚表面と形成する角度を指す。角度の大きさは、経穴の部位、病性・病位、手法の要求などに応じて決める。一般的に、鍼刺角度は直刺、斜刺、平刺の三種類に分けられる。 1.直刺:鍼身と皮膚表面が90°の角度となる垂直刺入。大部分の経穴、特に筋肉が厚い部位の経穴に適している。 2.斜刺:鍼身と皮膚表面が約45°の角度で傾斜して刺入。皮膚・筋肉が薄い部位、または重要臓器がある部位、または直刺・深刺が不適切な経穴、関節部の経穴に適している。また、特定の気の流れ・気の調整手法を用いる場合にもよく用いられる。 3.平刺(横刺、沿皮刺):鍼身と皮膚表面が約15°の角度で横方向に刺入。皮が薄く筋肉が少ない部位の経穴に適している。頭皮部、顔面部、胸骨部の経穴、透穴刺法における横透法、頭皮鍼法、腕踝鍼法などはすべて平刺法を用いる。 二、鍼刺の方向 鍼刺方向とは、鍼を刺入するときおよび刺入後の針先の向きを指す。簡略して「針向」と呼ぶ。鍼刺方向は、経脈の走行方向、経穴の分布部位、目標とする組織構造などを考慮して決定される。鍼刺方向は鍼刺角度と関連しているが、たとえば頭面部経穴は多く平刺、頸項・喉部経穴は多く横刺、胸部中央線経穴は多く平刺、側胸部経穴は多く斜刺、腹部経穴は多く直刺、腰部・背部経穴は多く斜刺または直刺、四肢部経穴は一般に直刺などが一般的である。ただし、鍼刺角度は経穴の部位特性に基づくべきであり、鍼刺方向は治療の必要に応じて異なる病症に対応するものである。 例として、顔車穴の場合、顎病・頬痛・口開け困難などの治療には、針先を側頭部に向けて斜刺し、針感を頬全体に放射させる。顔面神経麻痺・口歪みの治療には、針先を口吻方向に横刺する。痄腮(おたふくかぜ)の治療には、針先を腮腺部に向けて斜刺する。一方、歯痛の治療には直刺を行う。 三、鍼刺の深さ 鍼刺深さとは、鍼身が経穴の皮膚・筋肉にどれだけ深く刺入するかを指す。鍼刺深さを掌握する際は、針下に気を感じる(得気)ことが必要だが、組織・器官を傷つけないことも原則である。臨床での各経穴の鍼刺深さは、患者の年齢、体質、病情、経穴の部位、経脈の深さ、季節・時令、医師の鍼法経験、得気の必要性など多くの要因を総合的に考慮し、柔軟に決定する必要がある。『素問・刺要論』には、「刺には浅深があり、それぞれその理に従うべきである。……深さが適切でなければ、逆に大きな害となる」とあるように、鍼刺の深さは適切であることが重要である。 どのようにして正しい鍼刺深さを把握すべきか、以下の点に注意が必要である。 1.年齢 『霊枢・逆順肥瘦』には、「乳児・痩せ型の人には浅く速く刺す。壮年・肥満型の人には深く留める」とある。高齢者や虚弱な体質の人は気血が衰え、乳児は繊細で稚陰稚陽の状態であるため、深刺は避けるべきである。青年期の血気盛んの時期は、多少深く刺してもよい。 2.体格 患者の体質・体型には肥満・瘦せ、強弱の違いがある。『素問・三部九候論』には、「必ず形の肥瘦を測り、気の虚実を調整する」とある。張志聡も「形の肥瘦を知れば、鍼の深さがわかる」と述べている。つまり、痩せ型・虚弱な人には浅く刺し、肥満・強い人にはある程度深く刺すのが適切である。 3.部位 頭面部・胸背部の経穴は浅く刺す。四肢部・臀部・腹部の経穴はやや深く刺す。 4.経絡 経絡は人体に分布し、属性が深浅・陰陽の違いがある。古代文献では、経脈は深く、経脈に刺すには深く刺す。絡脈は浅く、絡脈に刺すには浅く刺す。陽経は表に属し、浅く刺す。陰経は裏に属し、深く刺す。『霊枢・陰陽清濁』には、「陰を刺するときは深く留め、陽を刺するときは浅く速く刺す」とある。肘・腕・膝・腿などに走行する経脈は深いため、深く刺す。手首・足首・指・足趾などに走行する経脈は浅いため、浅く刺す。 5.病情 『霊枢・衛気失常』には、「病の変化は浮沈・深浅にわたり、尽きることなく、それぞれの場所にあらわれる。軽症は浅く刺し、重症は深く刺し、軽症は少量、重症は多量、変化に応じて気を調節する」とある。『霊枢・終始』にも、「脈が実なら深く刺し、気を泄らせる。脈が虚なら浅く刺し、精気を損なわず、脈を養い、邪気のみを排する」とある。これは、鍼刺の深さは病性・病機に応じて診断して施す必要があることを示している。 6.手法 『医学入門』には、「補法は衛気を取り、軽く浅く刺し、衛気を後から追うようにして虚を補う。瀉法は栄気を捨て、重く深く刺し、栄気を前に迎えて実を泻く」とある。『難経』には、「栄を刺すときは衛を傷めず、衛を刺すときは栄を傷めず」とある。これらは、鍼刺手法における深さの把握が心中に明確で、的確な対応が必要であることを示している。深くすべきところを浅く刺すと、栄に届かず衛を傷つける。浅くすべきところを深く刺すと、過剰に攻撃し、栄を損なう。 7.時令 人体は時令と密接に関係しており、鍼刺も時季に応じて変化させる必要がある。『素問・診要経終論』には、「春夏秋冬、各々その制限がある」とある。鍼刺深さは病情に応じつつ、時令も考慮する必要がある。『霊枢・本輸』には、「春は絡脈・諸営・大経・分肉の間を刺し、重症は深く刺し、軽症は浅く刺す。夏は諸輸・孫絡・筋肉・皮膚の上を刺す。秋は諸合を刺し、春と同じ法を用いる。冬は諸井・諸輸の分を刺し、深く留める」とある。一般的に、春夏は浅く刺し、秋冬は深く刺すのが適切である。これは『難経』の「春夏は陽気が上にあり、人の気も上にあるため、浅く刺す。秋冬は陽気が下にあり、人の気も下にあるため、深く刺す」という説に基づいている。時令の規則に従わない場合、『素問・四時刺逆従論』が指摘するように、「この四時の鍼刺は、大逆の病にあたるため、従わないわけにはいかない。逆にすると、乱気相淫の病が生じる」となる。 8.針感 針下に酸・麻・膨張・重感が強く、早く現れる患者、あるいは精神的に緊張し、鍼刺を恐れる患者には、浅く刺す。針感が遅く、弱い患者には、やや深く刺す。『鍼灸大成』には、「凡て鍼刺の深さは、驚針則止(針刺の深さは、驚きがあれば止める)」とある。つまり、鍼刺深さは得気を基準とするという意味である。鍼刺の角度、方向、深さの三者は密接に結びついており、一般に深刺は直刺が多く、浅刺は斜刺または平刺が多い。延髄部・眼区・胸腹部・背腰部の経穴は、重要臓器・器官があるため、鍼刺の角度・方向・深さを慎重に把握し、鍼刺事故の防止に努める必要がある。
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