補(ほ)と瀉(しゃ)は、中医における治療原則です。「寒者温之(かんしゃん)」「熱者寒之(ねつがん)」は、正治法の基本です。 多くの人が、補と瀉は薬物治療の法則だと思い込んでいますが、実際には薬物と鍼灸の治療方法は異なりますが、施治の原則は一致しています。鍼灸における補瀉の手法は、明確な弁証施治の前提に立ってこそ成立します。この前提を離れて抽象的に補瀉を語ることは現実的ではありません。 鍼灸は治療手段であり、病気が回復に向かう重要な外部要因です。しかし、補虚瀉実の治療目的を達成するには、臓腑の気化機能(内因)を介して作用させる必要があります。したがって、適切な補瀉手法は、病情・体質・年齢・情志・気候・環境などの要素に応じて、補虚瀉実の原則と現在の病情を有机的に結びつける必要があります。実践では、補瀉の刺法が「過剰(過度な手法)」または「不足(量が不足)」すると、効果が得られず、場合によっては症状が悪化する事例が多く見られます。 鍼灸は、鍼刺の手法を通じて補虚瀉実の目的を達成します。『霊枢・九針十二原』には、「虚実の要は、九針が最も妙なるものである。補瀉の時、針を以て為す」と記されています。補法とは、人体の正気を鼓舞し、低下した機能を活発にする方法を指します。瀬法とは、病邪を疏泄し、亢進した機能を正常に戻す方法を指します。古代の医家は、長年の臨床経験を通じて、多数の鍼刺補瀉手法を創出し、まとめました。 補法は各種虚証に適用されます。捻転角度は小さく、力は軽く、頻度は遅く、時間は短く、親指は前方、人差し指は後方。提插では、浅くから深くへと、重く挿入し、軽く抜く。振幅は小さく、頻度は遅く、時間は短く、挿入を主とする。進針はゆっくり、抜針は速く。針先は経脈の流れ方向に沿って、順経而刺する。患者が呼気時に進針し、吸気時に抜針する。抜針後は針孔を閉じる。これらは、患者に補法鍼刺を行う際に注意すべき点です。 瀉法は各種実証に適用されます。捻転角度は大きく、力は強く、頻度は速く、時間は長く、親指は後方、人差し指は前方。提插では、深くから浅くへと、軽く挿入し、重く抜く。振幅は大きく、頻度は速く、時間は長く、抜きを主とする。進針は速く、抜針はゆっくり。針先は経脈の流れ方向に逆らって、逆経而刺する。患者が呼気時に抜針し、吸気時に進針する。抜針後は針孔を閉じず、針孔を揺らしてもよい。これらの操作法は、実証患者に対して非常に効果的です。 さらに、特殊な複式補瀉法として「焼天火(しょうてんか)」と「透心涼(とうしんりょう)」がありますが、操作が複雑なため、臨床ではあまり使用されていません。 また、虚実が明確でない、または虚実が混在している病証には、一般的に「平補平瀉(へいほへいしゃ)」を採用します。鍼灸得気後、均等な提插・捻転手法を用いればよいです。 ある特殊な状況(意識不明など)では、患者が治療に協力できないため、操作者は客観的指標を細かく観察し、効果を主な基準とする必要があります。『霊枢・小針解第三』には、「虚と実を為すとは、得たり失たりの如し。補者必若有所得也、瀉則恍然若有所失也」と述べており、補法では患者が何かを得たような感覚、瀉法では何かを失ったような感覚を持つべきであると示しています。
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