中暑の病因病機は、体質の正気虚弱に起因し、盛夏に暑熱または暑湿秽濁の気を感受することで、虚を突かれて邪熱が体内に滞留し、外に発散できず、正気がさらに消耗し、清竅が覆われ、経気の逆乱が生じ、高熱・神昏、甚だしくは熱極動風の状態となる。病情が進行すると、気耗陰竭となり、虚脱などの危険な状態に至ることもある。鍼灸による中暑治療の記載は、明清時代のいくつかの鍼灸書籍に多く見られ、『鍼灸大成』『楊敬斎鍼灸全書』『鍼灸逢源』『神灸経綸』などが代表的である。 病情の進行具合に応じて、軽症型と重症型に分けることができる。軽症中暑:頭暈・頭痛、胸闷・吐き気、高熱・汗閉、烦躁不安、脈洪数、舌苔黄膩。重症中暑:上記症状に加えて、暑熱が心を蒙蔽した場合は神昏・喘促・転筋・抽搐を呈する。気陰両傷の場合は、顔面蒼白、汗出・息切れ、四肢冷え、突然昏倒、脈虚細、舌色淡白などの症状を示す。治療も上記二型に応じて分けて行う。 (一)軽症中暑 1. 治則:暑熱を清瀉する。 2. 処方:内庭、曲池、内関、太陽。 3. 方義:内庭は足陽明経の荥穴であり、「荥主身熱」(『難経』)とされており、曲池は手陽明経の合穴。両穴を併用すれば陽明経の暑熱を清瀉できる。内関は陰維脈と通じており、陰維脈は腹裏を経由し胸膈を貫くため、胃を和らげ嘔吐を止める。太陽は経外奇穴であり、刺血により熱を清め、頭部の鈍痛を緩和する。 4. 治療法:患者を迅速に陰涼で通風の良い場所に移す。衣類を緩める。まず三稜鍼を両側太陽に点刺し、悪血を擠出し、他の経穴には涼瀉法を施す。症状が著しく改善するまで留針し、留針中も間欠的に運針を行う。 (二)重症中暑 暑熱が心を蒙蔽した場合 1. 治則:熱を清め、神を開き、抽搐を止める。 2. 処方:水溝、百会、委中、十宣。転筋・抽搐がある場合は陽陵泉、承山、後溪を加える。 3. 方義:暑熱が心を蒙蔽し、清竅が閉塞すると、水溝・百会を用いて脳を醒めさせ、閉塞を開く。委中は膀胱経の合穴であり、血郄でもあるため、刺血により血分の熱毒を瀉する。十宣は熱を瀉し神を調節し、陰陽を調整する効能を持つ。転筋・抽搐は熱極動風の兆候であり、筋会の陽陵泉を用いて筋を舒緩し、痙攣を解消する。承山は抽搐を止めて拘縮を緩和する効果のある経穴。後溪は督脈と通じ、脳と連携しており、風を鎮め、驚悸を鎮静する効果がある。 4. 治療法:まず水溝を深く刺し、歯の位置まで刺入し、針尖を上向きにし、瀉法を施す。委中・十宣は三稜鍼で血を瀉し、他の経穴も瀉法を用いる。刺激強度はやや強めに設定する。神志が清明になり、抽搐が止まるまで留針し、間欠的に運針を行う。 気陰両脱の場合 1. 治則:気を補い、陰を滋養する。 2. 処方:気海、百会、太淵、復溜。 3. 方義:気海は元気の海であり、灸法により元気を大きく補う。百会は諸陽の会であり、陽気を昇し、脱力を固める。太淵は手太陰肺経の原穴であり、このタイプは中暑の重篤な段階に属し、汗出・脈絶の状態であるため、肺陰を滋養し衛陽を固めるために選ぶ。復溜は足少陰腎経の経穴であり、腎陰を補い、腎気を振興する。四経穴を併用することで、内より肺腎の陰液を補い、外より脱力を固める。 4. 治療法:気海・百会には艾条雀啄法を用い、持続的に灸う。神志が清明になるまで続ける。他の経穴は鍼刺を行い、補法を用いて留針し、反復的に運針刺激を行う。 このタイプは重篤な状態であるため、他の中西医療法との併用が望ましい。
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